ワンパターンな成長戦略を持ち、売上規模がまだ小さい企業を見つけたら、次に何をチェックすべきでしょうか?
次に、PERをチェックしましょう。
まず本日は、「PERとは何ぞや?」という話をしたいと思います。
PERとは「何年で投資が回収できるか」を示す指標です。
PERの定義
PERは日本語で言うと「株価収益率」です。
求め方には以下の2通りがあります。
① PER=時価総額÷純利益
② PER=株価÷一株あたり純利益
① PER=時価総額÷純利益
時価総額は以前の記事「株は事業の一部」で説明しましたが、「ある企業の株式を全て買い占めるのに必要な金額」のことです。
純利益は「ある企業が年間に稼ぐお金」のことです。
したがって、①のPERが意味するところは、「ある企業を丸ごと買収するのに必要な金額は、その企業が稼ぐお金の何年分に相当するか」ということです。
② PER=株価÷一株あたり純利益
②は①から導くことができます。
時価総額と株価は以下のような関係になっています(時価総額については「株は事業の一部」を参照)。
株価×発行済株式数=時価総額
両辺を発行済株式数で割ると、以下の式が導かれます。
株価=時価総額÷発行済株式数・・・③
一方、一株あたり純利益は「株は事業の部分所有権である」という考えのもと、「その部分所有権が年間に稼ぐお金はいくらか」を表す数字で、以下の式で求められます(一株あたり純利益は英語でeps(earnings per share)とも言います)。
一株当たり利益=純利益÷発行済株式数・・・④
したがって、①の式(PER=時価総額÷純利益)は以下のように変形できます。
②の式(PER=株価÷一株あたり純利益)が導かれました。
②のPERが意味するところは、「ある企業の部分所有権(株式)を買った場合、その部分所有権が稼ぐお金の何年分に相当するか」ということです。
PERの意味:何年で投資が回収できるか
株は事業の一部なので、企業を丸ごと買収することと、株を買うことは、本質的には何も変わりません。
全体を買って所有者となるか、株を買って部分所有者となるか、というだけの違いです(厳密に言えば、企業を丸ごと買えば経営権を握ることができるので、若干多くの金額を支払う価値があります)。
例えば、(株)オクションという株式会社の純利益が1000万円とします。
発行済株式数は10万株とします。一株あたり利益は1000万円÷10万株=100円です。
あなたは(株)オクションをいくらで買いますか?
PER10倍で買う場合
②の式(PER=株価÷一株あたり純利益)の両辺に一株あたり利益をかけると、以下の式が導かれます。
一株あたり利益×PER=株価
したがって、(株)オクションの株をPER10倍で買う場合、株価は1000円となります。
株価=一株あたり利益×PER=100円×10倍=1000円
このとき、(株)オクションの時価総額は1億円となります。
時価総額=株価×発行済株式数=1000円×10万株=1億円
この金額は(株)オクションの純利益10年分に相当するので、「もし一株1000円で(株)オクションを丸ごと買収した場合、投資金額は10年で回収できる」ということです。
企業を丸ごと買収することと、株を買うことは、本質的には同じです。
つまり、「株をPER10倍で買う」ということは、「投資金額を10年で回収することを期待している」ということに他なりません。
PER20倍で買う場合
(株)オクションの株をPER20倍で買う場合、株価は2000円となります。
PER=株価÷一株あたり利益=2000円÷100円=20倍
このとき、(株)オクションの時価総額は2億円となります。
時価総額=株価×発行済株式数=2000円×10万株=2億円
この金額は(株)オクションの純利益20年分に相当するので、「もし一株1000円で(株)オクションを丸ごと買収した場合、投資金額は20年で回収できる」ということです。
企業を丸ごと買収することと、株を買うことは、本質的には同じです。
つまり、「株をPER20倍で買う」ということは、「投資金額を20年で回収することを期待している」ということに他なりません。
要するに
要するに、PERは「何年で投資が回収できるか」を示す、ということです。
もっと端的に言うと、PERは投資回収年数を示す、ということです。
PERは低いほどいい
PERが投資の回収年収を示すのであれば、株を買うときのPERは当然低い方が良いですよね?
例えば、年間家賃収入100万の区分マンションが、片方は1000万円、片方は2000万円で売られているとします。広さや立地などの諸条件は大体同じとします。
1000万円のマンションは投資回収に10年、2000万円のマンションは投資回収に20年かかります。
それなら、当然安い1000万円のマンションの方がお買い得ですよね?
株でも同じです。
PER20倍よりもPER10倍の方がお買い得です。
もちろん、企業は不動産と異なり、収益が変動するので、高いPERは将来の成長を期待されているわけですが、原則を忘れてはいけません。
株式投資を続けていると、PERは投資回収年数を示す、という原則を忘れがちになります。
PER5倍の地方スーパーマーケットを買わずに、話題沸騰中のPER100倍のAI(人工知能)関連企業を買ったりするんですよね。
本当にその地方のスーパーマーケットは純利益のたった5年分の価値しかないのか?
本当にそのAI関連企業に純利益の100年分を支払う価値があるのか?
そのことをよーーーく考えて判断する必要があります。
まとめ
株式に限らず、どんな投資でも「その投資が何年で回収できるか」という視点は必須です。
そのような視点がなく、ただ値上がりにかけるのは、投資ではなく投機です。
株に投資するときは、PERは「何年で投資を回収できるか」という原則を常に念頭に置いて判断しましょう。