2月13日にピクスタの2016年12月期通期決算が発表されました。
既存事業は順調そのものですが、新規事業の採算性が不透明なため、しばらく事業の経過を注視する必要がありそうです。
決算及び来期予想の概要
2016年12月期第1~4半期累計
売上 | 経常利益 | |
---|---|---|
2016年 | 1758 | 155 |
2015年 | 1388 | 120 |
前年比 | +27% | +29% |
※前年同期は単体、今期は連結なので、単純比較はできないことに注意。
2016年12月期第4四半期単独
売上 | 経常利益 | |
---|---|---|
2016年4Q | 470 | 9 |
2015年4Q | 394 | 44 |
前年比 | +19% | -80% |
※前年同期は単体、今期は連結なので、単純比較はできないことに注意
業績予想に対する進捗率
売上 | 経常利益 | |
---|---|---|
2016年 | 1758 | 155 |
業績予想 | 1726 | 139 |
進捗率 | 102% | 112% |
2017年12月期業績予想
売上 | 経常利益 | |
---|---|---|
2017年 | 2274 | 83 |
2016年 | 1758 | 155 |
前年比 | +29% | -46% |
※決算短信に記載された業績予想。この後、2017.2.24に韓国Topic Images Inc.社の子会社化により業績予想を修正している。
通期では増収増益となりました。
一方、第4四半期単独で減益となりました。本社移転費用と、8月に設立したスマホ写真マーケットプレイスのスナップマートが赤字である影響です。
来期予想は、新規事業への投資のため大幅な減益となっています。
新規事業の内容は以下のとおりです。
- 海外事業:東南アジア、東アジアでPIXTAと同様のストックフォトサービスを展開する。
- fotowa:個人向け出張撮影マッチングサービス。例えば七五三などのイベントに合わせて、カメラマンを雇って撮影してもらうことができる。
- Snapmart:スマホで撮影した写真のストックフォトサイト。
投資判断
既存事業であるPIXTAは順調です。
定額販売の契約数は良い調子で積み上がり、素材点数もどんどん増えています。
問題は今後の見通しです。経営陣は新規事業に大きく投資する意向です。
2017.2.24に韓国Topic Images Inc.社の子会社化による業績予想の修正を発表しており、修正後の業績予想に基づくPERは800倍を超えます(昨日の終値1451円から算出)。
PER800倍は「投資を回収するのに800年かかる」ということであり、明らかに割高です。
※当ブログ2016.12.24記事「PER=何年で投資が回収できるか」
また、投資家は「新規事業」と聞いたときには警戒すべきです。
新規事業と聞くと「一発当てればデカい金が転がり込んできそう」という期待感がわきますが、当たらなければ単なる損失で終わります。
ピーター・リンチによれば、「すでに利益があがっており、その着想で拡大が可能だとわかっている小さな会社」に投資するのがセオリーで、まだ利益もあがっておらず、拡大が可能かどうかもわからない新規事業に期待すると痛い目を見ます。
出典ピーター・リンチ「ピーター・リンチの株で勝つ」p265
ピクスタの新規事業はいずれも既存事業の周辺に位置するものであり、いわゆる「多悪化」ではなく、筋の良い事業展開だとは思います。
しかし、その成否は現時点では非常に不透明であり、私は期待していません。
ただ、単純に「新規事業によってコストが増え、割高になったから売る」という判断はしません。
ピクスタの場合、既存事業は順調に成長しており、新規事業への投資がなければPER20倍台で、成長性を鑑みると割高とは言えません。
したがって、新規事業が「大きく利益に貢献する」レベルにならなくとも、「赤字を出さない」レベルになれば十分です。
いずれもそれなりにニーズはありそうな事業なので、それくらいのハードルなら超えられるんじゃないか、と思います。
会社側も「数年後には増収増益体制を確立」と言っているので、とりあえず、2、3年くらい見守ろうと思います。
それでも新規事業が赤字を垂れ流し続けるようであれば、そのときの株価と照らし合わせて売却を検討します。
結論としては、こんな感じです。
- 株価は割高に見えるが、既存事業は順調に成長しており、新規事業への投資がなければ割高とは言えない。
- 新規事業には期待せず、赤字を出さないレベルになれば良しとする。
- 2、3年様子を見てみて、それでも収益を圧迫し続けるようであれば売却を検討する。
単年での結果を求める短期投資家であれば、来期が減益予想なら即売らざるを得ませんが、想定する投資期間が長い投資家は、このように「数年待つ」という判断も可能です。