ハンバーガー屋の財務諸表①:貸借対照表編

企業に投資する際には、財務諸表の分析が不可欠です。
投資初心者には「数字や専門用語が多くて取っ付きにくい」と感じるかもしれませんが、財務諸表というのはそもそも「誰でも理解できるような統一したルールに基づいて企業の経営状態を記述する」という目的で作られているので、その気になれば中学生でも理解できます。

そこで、まずは財務諸表について大まかにイメージできるよう、これから数回に渡って、ハンバーガーショップを開業するシミュレーションを通じ、財務諸表について書いていきます。

財務諸表とは

財務諸表は、上場企業が外部への開示情報として発行する「有価証券報告書」「決算短信」に掲載されています。
財務諸表は以下の3つから構成されます。

  1. 貸借対照表:どのような資産を持っているか、どのように資金を集めたかを表す。
  2. 損益計算書:期間ごとにどれだけ儲かったかを表す。
  3. キャッシュフロー計算書:お金の出入りを表す。

では、これからある脱サラ起業家がハンバーガーショップを開業するというシミュレーションをしながら、財務諸表について学んでいきましょう。

(株)テキサスバーガーの開業準備

田中くんは、30代前半のサラリーマンです。
中堅の食品系商社に入社して10年目を迎えるのですが、つまらなそうに仕事をしている先輩社員たちを見て、このまま会社のキャリアステップを登っていくことに魅力を感じることができず、思い切って会社を辞め、起業することにしました。

食品業界での経験が長いこともあり、飲食系の店がいいんじゃないか、ということでハンバーガーショップを開業することにしました。
「ハンバーガーならテイクアウトもできて、小スペースでも回転率が高いし、居酒屋やラーメン屋など、他の業態に比べて競争が激しくない」
さすが元敏腕商社マンの田中くん、目の付け所が良いです。

店の名前は本場を連想させる「テキサスバーガー」です。
「高価格帯のハンバーガーだからイメージが大事だろ。アメリカ行ったことないけど」
さすが元敏腕商社マンの田中くん、大胆不敵です。

会社設立

さて、まずは資金調達です。
田中くんの貯金は500万円あります。
また、田中くんのお兄さんが500万円を出資してくれることになりました。
この資金を資本金として、2人は株式会社を設立することにしました。
会社の名前は店と同じ(株)テキサスバーガーです。
資本金は兄弟合わせて1000万円なので、1株1万円で1000株発行し、兄弟で500株ずつを持ち合うことにします。

融資

ざっと見積もったところ、開業資金として2000万円程度必要そうなので、まだ足りません。
そこで、日本政策金融公庫から開業支援融資として金利3%、10年返済で1000万円借りることにしました。

設備投資

次に、テナント探しです。
観光地近くの良い立地条件に家賃20万円という手頃な物件を見つけました。
敷金として家賃の10か月分、200万円を大家さんに渡します。

内装は、アメリカ南部の開放的な雰囲気をイメージしたものにしました。
知り合いの業者さんに頼んで、1000万円で仕上げてもらいました。

厨房器具やレジ、テーブルや椅子などの備品を揃えました。
合計で600万円かかりました。

さらに食材の仕入れや、紙コップや包装、お手拭きなどの消耗品に100万円かかりました。

開業費用として、合計で1900万円かかりました。
残り100万円は現金として取っておきます。

貸借対照表を見てみよう

さて、ここからは(株)テキサスバーガーの貸借対照表を見ていきます。
貸借対照表は、どのような資産を持っているか、どのように資金を集めたかを示す表のことです。
(株)テキサスバーガーの会社設立時点から開業時点で貸借対照表はどう変化したでしょうか?

会社設立時点

貸借対照表は、左側に保有資産を記載します。
田中くんとお兄さんで500万円ずつ出資したので、1000万円の現金があります。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部
現金 1000
資産合計 1000

一方、右側には資金調達源、つまり負債と純資産を記載します。
この時点の負債はゼロ、田中くんとお兄さんの出資は「資本金」として純資産の部に記載します。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 1000 借入金 0
純資産の部
資本金 1000
資産合計 1000 負債純資産合計 1000

融資後

左側に保有資産を記載します。
資本金1000万に加え、公庫からの融資が1000万円で、合計2000万円の現金があります。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部
現金 2000
資産合計 2000

一方、右側には資金調達源を記載します。
公庫からの借り入れは「借入金」として負債の部に記載します。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 2000 借入金 1000
純資産の部
資本金 1000
資産合計 2000 負債純資産合計 2000

設備投資後

開業資金2000万円は以下の資産に変わりました。

  • 敷金200万円。
  • 内装1000万円。貸借対照表では「建物及び構築物」と記載。
  • 備品600万円。
  • 食材と消耗品100万円。貸借対照表では「原材料及び貯蔵品」と記載。
  • 残りの現金100万円。

「敷金は退居時に返ってくるから資産なのはわかるけど、内装、備品、食材・消耗品が資産なのは何で?」と思われるかもしれません。
確かにお金は既に支出しているのですが、内装・備品など何年間も使えるものは一旦資産に計上し、毎年少しずつ「減価償却費」として費用に計上していきます。
すぐに費用に計上してしまうと、年によって費用の額に大きなばらつきが出てしまい、本来の収益力がわからなくなってしまうため、会計上そのような処理をするのです。
また、食材や消耗品は一旦資産に計上し、使った時点で費用に計上します。

以上を踏まえて、左側に保有資産を記載します。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部
現金 100
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000
備品 600
敷金 200
資産合計 2000

一方、右側には資金調達源を記載します。
こちらは融資後と変化がありません。

<貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 100 借入金 1000
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
備品 600 資本金 1000
敷金 200
資産合計 2000 負債純資産合計 2000

貸借対照表を見てわかること

どの貸借対照表を見ても、企業がどんな資産を持っていて(左側)、どのように資金を調達したか(右側)が一目瞭然ですね。
このように、「ある一時点での企業の財務状態をパッと見でわかるよう示す」というのが貸借対照表の役割です。

また、左側と右側で合計が必ず同じになっているのがわかります。
このことから、英語では貸借対照表のことを「バランスシート」と呼びます。
略して「B/S」と表記することもあります。

貸借対照表は基本的にはこのように左右に並べて記載しますが、有価証券報告書や決算短信では、スペースの関係上、縦に並べて記載します。

まとめ

そろそろお腹いっぱいになってきたと思うので、続きは次回にします。

今回はとりあえず、「貸借対照表は、企業がどんな資産を持っていて(左側)、どのように資金を調達したか(右側)を示す」というポイントだけ押さえてください。

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