ハンバーガー屋の財務諸表④:3つの財務諸表の関係

ハンバーガー屋の財務諸表①:貸借対照表編」「ハンバーガー屋の財務諸表②:損益計算書編」「ハンバーガー屋の財務諸表③:キャッシュフロー計算書編」の続きです。

今回は、3つの財務諸表の関係について説明します。

期末時点の貸借対照表

テキサスバーガーの期末時点の貸借対照表を作成してみましょう。

まず、営業開始時点での貸借対照表を再確認します。

<営業開始時点の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 100 借入金 1000
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
備品 600 資本金 1000
敷金 200
資産合計 2000 負債純資産合計 2000

これを元に、変化した数字を記入していきます。

まず、キャッシュフロー計算書で現金の期末残高を参照します。

<キャッシュフロー計算書(単位:万円)>

現金及び現金同等物の期首残高 1000
営業CF
当期純利益 560
減価償却費 200
たな卸資産の増減額(△は増加) △100
営業CF合計 660
投資CF
敷金及び保証金の差入れによる支出 △200
有形固定資産の取得による支出 △1600
投資CF合計 △1800
財務CF
借入れによる収入 1000
借入金の返済による支出 △100
配当金の支払額 △400
財務CF合計 500
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) △640
現金及び現金同等物の期末残高 360

現金の期末残高は360万円となっています。
この金額を貸借対照表の現金の欄に記入します。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金
原材料及び貯蔵品
建物及び構築物 純資産の部
備品 資本金
敷金
資産合計 負債純資産合計

原材料及び貯蔵品と敷金は営業開始時点と変化がありません。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 純資産の部
備品 資本金
敷金 200
資産合計 負債純資産合計

さて、建物及び構造物、備品についてですが、以下のとおり減価償却しています。

減価償却費(建物及び構築物):1000万円÷10年=100万円
減価償却費(備品):600万円÷6年=100万円
減価償却費合計:100万円+100万円=200万円

よって、減価償却分を最初に投資した金額から引きます。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金
建物及び構造物(純額) 900
備品 600
減価償却累計額 100
備品(純額) 500
敷金 200
資産合計 負債純資産合計

資産合計は2060万円となります(建物及び構造物と備品については、純額を足し合わせます)。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金
建物及び構造物(純額) 900
備品 600
減価償却累計額 100
備品(純額) 500
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計

次に貸借対照表の右側です。
借入金は100万円返済したので、900万円です。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金  900
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金
建物及び構造物(純額) 900
備品 600
減価償却累計額 100
備品(純額) 500
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計

資本金は最初に田中くんとお兄さんが出資した額なので、変化ありません。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金  900
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金  1000
建物及び構造物(純額) 900
備品 600
減価償却累計額 100
備品(純額) 500
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計

これで、負債純資産の合計を出すと、左右で数字が160万円分合いません。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金  900
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金  1000
建物及び構造物(純額) 900
備品 600
減価償却累計額 100
備品(純額) 500
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計 1900??

「バランスシート」という呼び名のとおり、貸借対照表の左右の合計は必ず同じになるはずなので、これはおかしいです。

この差額160万円は「利益剰余金」と呼ばれるもので、純資産の部に記載されます。
これで期末時点の貸借対照表は完成です。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金  900
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金  1000
建物及び構造物(純額) 900
備品 600 利益剰余金 160
減価償却累計額 100
備品(純額) 500 純資産合計 1160
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計 2060

損益計算書と貸借対照表の関係

ハンバーガー屋の損益計算書③:キャッシュフロー計算書編」で、当期純利益560万円のうち、400万円を配当金として出して、残り160万円を会社に取っておいたのを覚えていますでしょうか?
この取っておいた現金が利益剰余金なのです。

テキサスバーガーの利益配分

このように、株主に還元した後に残るお金のことを「内部留保」と呼びます。

で、これが貸借対照表の「利益剰余金」に計上されます。
つまり、損益計算書と貸借対照表の関係はこのようになっています。

損益計算書と貸借対照表の関係

このようにして、毎年毎年、損益計算書の当期純利益が貸借対照表の利益剰余金に組み込まれていきます(正確には当期純利益から配当や自社株買いなどの株主還元を除いた額が利益剰余金に組み込まれるのですが、図がややこしくなるので単純化しました)。

これが損益計算書と貸借対照表の関係です。

キャッシュフロー計算書と貸借対照表の関係

テキサスバーガーの期首(会社設立時点)の貸借対照表はこうでした。

<期首の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 1000 借入金 0
純資産の部
資本金 1000
資産合計 1000 負債純資産合計 1000

で、キャッシュフロー計算書はこうでした。

<キャッシュフロー計算書(単位:万円)>

現金及び現金同等物の期首残高 1000
営業CF
当期純利益 560
減価償却費 200
たな卸資産の増減額(△は増加) △100
営業CF合計 660
投資CF
敷金及び保証金の差入れによる支出 △200
有形固定資産の取得による支出 △1600
投資CF合計 △1800
財務CF
借入れによる収入 1000
借入金の返済による支出 △100
配当金の支払額 △400
財務CF合計 500
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) △640
現金及び現金同等物の期末残高 360

実は、この2つがあれば、期末の貸借対照表は大体作成できます。

<期末の貸借対照表(単位:万円)>

資産の部 負債の部
現金 360 借入金  900
原材料及び貯蔵品 100
建物及び構築物 1000 純資産の部
減価償却累計額 100 資本金  1000
建物及び構造物(純額) 900
備品 600 利益剰余金 160
減価償却累計額 100
備品(純額) 500 純資産合計 1160
敷金 200
資産合計 2060 負債純資産合計 2060

3つを見比べてみれば、計算に必要な情報は大体そろっていると思います。
足りない情報は減価償却費の内訳くらいです。

キャッシュフロー計算書が表すのは期首から期末までの現金の動きです。
これはすなわち期首から期末にかけての貸借対照表の変化を表しているのと同じことなのです。
現金が動くことは、つまりその現金の対価としての資産が動いているからです。
よって、キャッシュフロー計算書と貸借対照表の関係はこのようになっています。

キャッシュフロー計算書と貸借対照表の関係

キャッシュフロー計算書は、貸借対照表が期首から期末にかけて辿った道筋を教えてくれる、ということです。

まとめ

財務諸表は、それぞれ別々に見るのではなくて、こうして3つを結び付けて見ることが大事です。
それができるようになれば、財務諸表から企業のお金の動きがイメージできるようになります。

以上でハンバーガー屋の財務諸表シリーズは終了です。

企業に投資する際には、財務諸表の分析が不可欠です。
避けては通れない道なので、面倒くさがらずに勉強しましょう。

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