期待リターンのポイント①:なぜ5年後なのか?

下記記事の続きです。
2018.10.20 期待リターンを使ったバリュエーション

私は、期待リターン算出の目標を直近決算から見て5年後に設定しています。
これは投資期間を5年以上と想定しているからです。

epsの成長だけに期待する

個別銘柄の株価が上昇する理由は3つあります。
①市場全体の上昇:市場全体が上げれば、個別銘柄もつられて上げます。
②評価(PER)の上昇:個別銘柄に対する市場の期待が高まれば、PERが上昇し、株価も上がります。
③epsの成長:企業が利益成長や自社株買いによりepsを成長させれば、株価も上がります。

このうち、私が期待するのは③epsの上昇のみです。
いかにepsが成長するか、ということにのみ焦点を当てて銘柄選択をしています。

①市場全体の上昇は、予想するには難しすぎます。
中央銀行の動きや政治情勢を考慮して投資判断する、いわゆる「グローバルマクロ戦略」という投資スタイルも存在しますが、私の能力では真似できない芸当です。
市場全体の相場の上げ下げは甘んじて受け入れることにしています。

②評価(PER)の上昇も、私には苦手な分野です。
純粋なバリュー投資というスタイルがこれに該当すると思います。
評価の上昇に期待して投資をするには、コンセンサス、つまり「市場が個別銘柄に対してどのような期待をしているか」ということを察知できるセンスが重要です。
例えば、「次の決算は良さそうだから株価は上がるだろう」というだけでは駄目で、「次の決算は良さそうだ。しかし市場が期待しているのはもっと上の数字だから株価は下がるだろう」というような思考ができないと、バリュー投資はできません。
つまり、企業の決算を見ているだけでは駄目で、投資家たちの心理を読むことが要求されます。
典型的な理系人間である私にはちょっと難しいです。
評価(PER)の上昇によって株価が売却基準に達することはありますが、最初からそれを期待せず、あくまでボーナスと捉えています。

③epsの上昇だけは、自分でもある程度予想できると思うのです。
特別なことをしなくても、「競争優位性」「成長性」「不況耐性」の3つの要素に焦点を当てて企業を丁寧に分析すれば、そこそこの精度で企業の利益成長を予想することができます。

したがって、epsの上昇に期待する「成長株投資」が私の性格に合っていると思うのです。

全体相場の影響を避けるなら必然的に長期投資

epsの上昇に期待するのであれば、必然的に投資期間は長期とならざるを得ません
投資期間の設定が短すぎると、全体相場の影響が大きすぎるからです。

例えば、投資した企業が想定通りに成長したとしても、3年後の相場がリーマンショック後のような低迷相場だったとしたらどうでしょうか。
当時は20%の成長株でもPER一桁なんてことはザラでした。
投資期間2年と設定して、20%成長株にPER20倍で投資したとしましょう。
年間でepsは1.44倍になりますが、2年後にPER8倍評価なら、株価は-42.4%の含み損です。

投資期間をもっと長期に設定すれば、全体相場の影響を緩和することができます。
20%成長株にPER20倍で投資し、5年後にPER8倍でも、株価は買値をわずか-0.5%下回るだけです。
私が不況耐性を重視するのも、長期投資の対象は途中で不況期が訪れたとしても成長し続けられるような企業でなければならないからです。

中期投資では市場を出し抜けない

一般的に市場は1~2年後の業績を織り込む、と言われます。
市場全体が低迷しているような状況でない限り、成長株を割安に買うことはできません。
今の相場環境であれば、20%成長株なら最低でもPER20倍以上には評価されていますよね。

eps 株価 PER
現在 100 2000 20.0
1年後 120 2000 16.7
2年後 144 2000 13.9

仮に「今後2年は成長するだろう」と見込んで、20%成長株をPER20倍で買ったとしましょう。
想定通りに2年間成長したとしても、2年後のPERは13.9倍と、平均的な水準までしか下がりません。
もし2年後の時点でさらなる成長が見込めなければ、株価は大して上がらないでしょう。
これが5年だと話は変わってきます。

eps 株価 PER
現在 100 2000 20.0
1年後 120 2000 16.7
2年後 144 2000 13.9
3年後 173 2000 11.6
4年後 207 2000 9.6
5年後 249 2000 8.0

5年後であればPERは8.0倍まで下がります。
これなら5年後に成長率が下がって、平均的なPER14~15倍評価を受けていたとしても、2倍弱くらいのリターンにはなります。

市場のバリュエーション能力は意外と侮れません。
成長株はそれなりの評価を受けているので、2年程度先の成長が見通せたとしても大したリターンを得ることはできません。
市場を出し抜くには5年程度先を見据えなければならないのです。
さすがに市場も5年先までの業績は織り込んでいないので、そこにギャップが生じ、リターンを生みます。
私が競争優位性や成長性を重視するのも、投資期間の途中で価格競争にならないか、十分な成長余地があるか、という点が重要だからです。

せいぜい5年が限度

元ネタである「億万長者を目指すバフェットの銘柄選択術」では、期待リターン算出の目標を10年後としていますが、さすがに10年は長すぎます。

10年くらいは成長できるだろうと思える企業もありますが、そうすると投資対象はかなり絞られてしまいます
保有銘柄の中でも、ピクスタは10年くらいは余裕で成長しそうですが、リンクバルが今のペースで成長を続けられるのはまあ5年くらいかな、という気がします。
既に会員数130万人ですからね。
今の成長率を10年続けると仮定すると10年後の会員数は500万人以上となる必要があり、ちょっと非現実的です。

また、業績予想をするにも、10年先をターゲットにしてしまうとさすがにブレが大きすぎます。
せいぜい5年くらいが現実的なラインかな、と思います。

まとめ

5年という期間は短すぎず、長すぎず、小型成長株投資には最もバランスの良い期間だと考えています。
ゆえに、期待リターン算出のターゲットを5年と設定しています。

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