利益率改善の事例②:セリア(2782)

利益率改善シリーズの続きです。

参考記事:
2017.4.15 利益率が改善する企業を買え
2017.4.22 利益率が改善しやすい収益構造①:固定費の増加を伴わない売上拡大
2017.4.29 利益率が改善しやすい収益構造②:高利益率商品の成長
2017.6.3 利益率改善の事例①:カカクコム(2371)

2つ目の事例は100円ショップのセリア(2782)です。
当ブログ2016.12.10記事「ワンパターンな成長戦略」で紹介したように、セリアはひたすら店舗数を増やすというワンパターンな成長戦略で売上を伸ばし続けている、成長株のお手本のような企業です。

セリアは「固定費の増加を伴わない売上拡大」と「高利益率商品の成長」という2つの「利益率が改善しやすい収益構造」によって利益率を大きく改善させました。

業績の推移

セリアの利益率改善が顕著に見られた2009年以降の業績の推移を見てみましょう。

セリアの業績推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

売上の拡大とともに営業利益率が力強く上昇しています。

販売管理費率の逓減→固定費の増加を伴わない売上拡大

今回は販売管理費と原価に分けて見て行くことにします。その方がわかりやすいので。

まずは、販売管理費を建物設備費、人件費、広告宣伝費、変動費に分けて推移を見てみます。

セリアの販売管理費推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

建物設備費、人件費、変動費で、売上に対する比率が下がっています。
これらの費用比率の低下は、既存店売上が伸びたことで「固定費の増加を伴わない売上拡大」が起きたことによると考えられます。

建物設備費

地代家賃、減価償却費、水道光熱費をひっくるめて「建物設備費」としました。
建物設備費率は減少傾向です。

もしセリアの売上拡大が出店だけによるものならば、建物設備費率は下がりません。
店が増えれば売り上げも増えますが、その分固定費も増えるからです。

となると、建物設備費率が減少しているということは、既存店売上が増えているのではないか、と推測できます。
既存店売上とは、新規出店を除いた店舗の売上のことです。既存店売上を前年と比較することで、新規出店の影響を除き、1店舗当たりの売上をどれだけ伸ばしたかを把握することができます。
セリアの有価証券報告書には、年によっては既存店売上の記載がないのですが、店舗数を開示しているので、代わりの指標として、売上÷店舗数で1店舗当たりの売上を算出してみましょう。

セリアの1店舗当たり売上推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

見事に右肩上がりです。

1店舗当たりの売上が伸びているということは、顧客回転率または顧客単価が増えていると考えられます。
要するに「いっぱい客が来るようになった」「客がいっぱい商品を買うようになった」ということです。
どちらの要因も、新たな設備投資をせずに売上を伸ばしているので、顧客回転率や顧客単価が増えると固定比率は下がります。

一方で、1店舗当たりの売上が伸びているのには、店の面積が広くなった(大型店が増えた)という要因も影響しているでしょう。
この要因は、売上を増やすための設備投資が発生しているので固定比率は下がりません。
1店舗当たりの売上は8年間で30%以上も増えており、顧客回転率や顧客単価だけが要因だとしたら営業利益率はもっと改善するはずなので、店の大型化もかなりの部分で影響していると考えられます。

人件費

人件費率も減少傾向です。
これも建物設備費と同じように、既存店売上の増加によるものと推測できます。
ただ、建物や設備とは違って、顧客回転率や顧客単価が上がれば、仕事が増えるので人を増やす必要も出てきます。
人件費を増やさずに売上を伸ばすには、1人1人がより多くの仕事をこなせるようになる(つまり労働生産性を上げる)必要があります。
労働生産性を把握するには、売上を従業員数で割って、従業員1人当たりの売上高を見れば良いです。

セリアの従業員1人当たり売上推移(2009~2016)

出所:有価証券報告書を元に当方作成

増加傾向です。
既存店売上の増加に対し、従業員をあまり増やさずに、1人当たりの仕事量を増やすことで対応したため、人件費率を低下させたといえるでしょう。

広告宣伝費

広告宣伝費率はあまり変化がありませんね。
小売店は、顧客に忘れないでいてもらうために、定期的に広告を打つ必要があるため、一定の水準で広告宣伝費を投入する必要があります。
セリアもその例に漏れないのでしょう。

変動費

販売管理費のうち、上記以外の全ての費用を変動費に分類しました。
これも低下傾向です。
おそらくここにも固定費的性格のものが含まれており、既存店売上の増加に伴い比率が下がっていると推測します。

原価率の逓減→高利益率商品及び事業セグメントの成長

次に、原価率の推移を見て行きます。

セリアの原価率推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

これも減少傾向です。
この原価率の逓減は主に以下の2つの要因によるものです。

  • 雑貨の売上比率の増加
  • 直営店の売上比率の増加

雑貨の売上比率の増加

セリアは雑貨と菓子食品を販売していますが、雑貨の粗利益率は菓子食品に比べて相対的に高くなっています(粗利益率は雑貨が4割程度、菓子食品が2割強です)。
この差の原因は、雑貨は自社開発であるのに対し、菓子食品が他社メーカーのものだからと考えられます。
商品区分別の売上比率を見てみましょう。

セリアの商品区分別売上比率

出所:有価証券報告書を元に当方作成

菓子食品の売上比率が減少し、雑貨の売上比率が増加しています。
セリアは利益率の高い商品の売上比率を増やすことで原価率を逓減させたのです。

直営店の売上比率の増加

セリアは直営店とFCの2つの出店形態で展開しています。
直営店はそのまま店での売上が売上に計上されます。
一方、FCの場合は、セリア商品をFC加盟店に対し卸しており、この卸売の売上高が売上に計上されます。
FC加盟店でも商品は当然100円で売っているため、卸売のときにはもっと低い値段で売っています。
よって、FC加盟店に対する卸売は直営店より利幅が少ないのです。
なお、一般的には、フランチャイズと言うと、FC加盟店が本部に対しロイヤリティを払うので、FC事業は直営店事業よりも利益率が高くなることが多いのですが、セリアの場合は珍しくFC加盟店からロイヤリティを徴収していないので利益率が低くなっています。

では事業セグメント別の売上を見て行きましょう。

セリアの事業部門別売上比率

出所:有価証券報告書を元に当方作成

FC売上の比率が下がり、直営店売上の比率が上がっていることがわかります。
セリアは利益率の高い事業セグメントを増やすことで、原価率を逓減させたのです。

原価率には、他にも原油価格の低下(セリアの雑貨はプラスチック商品が多い)や為替(商品や原材料を輸入している)などの外部要因も影響していますが、「継続的な」影響と言うと、上記の2つの要因が大きいです。

利益率改善のインパクト

2006年から2017年にかけて、売上は2.1倍になり、純利益は13.4倍、純利益率は1.1%から7.2%に改善しました。
当ブログ2017.4.15記事「利益率が改善する企業を買え」で紹介した
「利益成長率=売上成長率×利益率の改善率」の式に当てはめると以下のようになります。

利益成長率=売上成長率2.1倍×利益率6.5倍=13.4倍

年率換算では+38.4%となります。
セリアの場合、売上の拡大よりも利益率の改善の影響の方が大きかったことがわかります。

株価も大きく上昇しました。

セリア(2782)の株価チャート(2003~2017)

セリア(2782)の株価チャート 出所:株探 当方で一部編集

まとめ

実店舗型ビジネスで既存店売上を伸ばし続けると、固定費の増加を伴わずに売上が増えるので、利益率が改善します。
また、利益率が相対的に高い商品・事業セグメントが伸びている企業は、利益率が改善します。
両者が合わさることで、セリアの利益は劇的に増え、株価100倍以上というとてつもないリターンをもたらしました。

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