利益率改善の事例①:カカクコム(2371)

決算発表が続いたので少し間が開いてしまいましたが、これまで「利益率が改善しやすい収益構造」をテーマに何個か記事をアップしました。

参考記事:
2017.4.15 利益率が改善する企業を買え
2017.4.22 利益率が改善しやすい収益構造①:固定費の増加を伴わない売上拡大
2017.4.29 利益率が改善しやすい収益構造②:高利益率商品の成長

では、実際にこうした収益構造により利益率を改善させた成長企業の例をいくつか見て行きましょう。

1つ目の事例はカカクコム(2371)です。
当ブログ2016.12.10記事「ワンパターンな成長戦略」で紹介したように、カカクコムは「価格.com」や「食べログ」を中心とした運営サイトの知名度の向上に努め、口コミや掲載商品・店舗数を増やすというワンパターンな成長戦略で成長を遂げた、成長株のお手本のような企業です。

で、このカカクコムが「固定費の増加を伴わない売上拡大」の典型例なんです。
参考記事:
 2017.4.22 利益率が改善しやすい収益構造①:固定費の増加を伴わない売上拡大

カカクコムは上記記事の中の「ITサービス」に該当します。

業績の推移

カカクコムの利益率改善が顕著に見られた2006年以降の業績の推移を見てみましょう。

カカクコム(2371)の業績推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

売上の拡大とともに営業利益率が力強く上昇しています。

費用の分析

では、分析のため、費用を人件費、建物設備費、のれん償却費、広告宣伝費、変動費に分類してその推移を見てみましょう。

カカクコム(2371)の費用推移

出所:有価証券報告書を元に当方作成

人件費

まず、人件費を見てみると減少傾向であることがわかります。
なぜでしょうか?

カカクコムの収益源を今一度確認してみましょう。

  • 価格比較に掲載された店舗からの仲介料収入:ユーザーが価格.comを通じて掲載された店舗のサイトに行ったり、商品・サービスを購入したりすると、掲載店舗からカカクコムに仲介手数料が入る。
  • 広告収入:価格.comや食べログには広告バナーが掲載されており、広告主からカカクコムに掲載料が支払われる。
  • プレミアム会員からの会費収入:食べログは無料で閲覧できるが、月額300円の会費を払うと、評価の高い順に店を検索できたり、クーポンが手に入ったりする。

これらの売上は基本的には「自動的に」入ってくるものです。
カカクコムが何か特別なアクションを起こさなくとも、ユーザーが価格.comを通じて商品を買えば掲載店舗からお金が入ってきますし、食べログの月会費も毎月入ってきます。
したがって、売上が増えたからと言って人手はあまり必要ありません。
同社の社員は営業人員やサイトの維持管理のための人員が主だと思いますが、売上に比例するほどには増やす必要はないのです。
よって、人件費率は売上の拡大に伴い下がっていきます。

建物設備費

地代家賃と減価償却費を「建物設備費」としました。
これも減少傾向です。
カカクコムはITサービス企業のため、店舗も工場も必要ありません。
建物として必要なのは、社員とサーバーを収容するためのビルだけですが、上記の理由で社員は売上に比例するほどには増えませんし、サーバーはそんなに場所を食うものではありません。
よって、建物設備費率は売上の拡大に伴い下がっていきます。

のれん償却費

のれん償却費率も売上の拡大とともに減少しています。

のれんとは簡単に言うと買収費用のことです。
例えば、10億円の資産を持つ会社を20億円の現金で買収した場合を考えてみましょう。
現金が20億円減って、資産が10億円増えるため、差し引きで10億円の費用がかかります。
この10億円は損益計算書に費用として計上するのですが、10億円の費用を一回に計上してしまうと、収益の変動が大きくなってしまうので、一旦「のれん」として資産に計上して何年かかけて償却していきます。
10年で償却するとすれば、毎年1億円ずつ「のれん償却費」として販売管理費に計上していくわけです。
(・・・文字だけじゃわかんないですよね。そのうち場を改めて説明します。)

のれんが増えるのは新たな買収を行ったときだけなので、買収をガンガン行うような企業でなければ、「利益率が改善しやすい収益構造」を持つかどうかに関わらず、のれん償却費率は売上増加とともに減ることが多いです。

広告宣伝費

広告宣伝費は増えたり減ったりで、あまり傾向は見られません。
カカクコムの広告宣伝費はサイトに集客するためのweb広告が主です。
成長を維持するために一定水準の広告宣伝費の支出は必要だと考えられます。

変動費

便宜上、上記以外の全ての費用を「変動費」に分類しましたが、この中にも固定費的な性格の費用は含まれているため、売上の拡大に伴い、変動費率は減少しています。

2012年から2013年にかけて変動費率がガクンとさがっていますが、これは会計方針の変更によるものです(それまで費用計上していたプロバイダのキャッシュバック費用などを、あらかじめ控除してから売上計上するようにした)。

2014年以降は逆に増加傾向ですが、これは食べログの売上拡大によるものと推測されます。
食べログの提携飲食店を獲得するために、自社の営業部隊だけでなく広告代理店も使っているため、これら代理店に支払う手数料が増えているのです。
この変動費の増加は利益に直接つながっていると思われるので、特に悪い傾向ではないと思います。

利益率改善のインパクト

2006年から2017年にかけて、売上は15.4倍になり、純利益は35.6倍、純利益率は14.3%から32.9%に改善しました。
当ブログ2017.4.15記事「利益率が改善する企業を買え」で紹介した
「利益成長率=売上成長率×利益率の改善率」の式に当てはめると以下のようになります。

利益成長率=売上成長率15.4倍×利益率2.3倍=35.6倍

年率換算では+38.4%となります。
売上成長率15.4倍(年率換算+28.2%)は凄まじい成長力と言えますが、利益率の改善によって、さらに+10.2%の押し上げ効果があったわけです。

株価も大きく上昇しました。

カカクコム(2371)の株価チャート 出所:株探 当方で一部編集

カカクコム(2371)の株価チャート 出所:株探 当方で一部編集

ただ、株価は2016年以降、軟調です。
2014年以降は営業利益率は減っているものの、これは変動費の増加によるもので、固定費率は2014年以降も引き続き低下傾向を示しており、「固定費の増加を伴わない売上拡大」は継続しています。
しかし、価格.comの月間利用者数は5000万人、食べログの月間利用者数は1億人を超え、これまでのペースで売上の拡大を継続するのが困難になってきたように見えます。
もっと規模が小さいうちに買いたかった企業ですね。
参考記事:
2016.12.17 小さいことは良いことだ

まとめ

カカクコムのようなITサービス企業の商品は「情報」なので、売上を増やすのにあまりコストがかかりません
よって、こうしたITサービス企業は売上の拡大に伴い、固定比率が下がり、利益率が大きく改善します。
売上拡大に利益率改善が加わることで、カカクコムは株主に大きなリターンをもたらしました。

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コメント

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