クックビズ(6558)の全部売却

プライベートで色々立て込んでいたので、長らくブログの更新を休止していましたが、そろそろ落ち着いてきたので更新を再開します。

まず、休止していた間の売買から整理していくことにします。
クックビズ(6558)を4月6日に売却しました。
売却理由は新型コロナウイルスの流行によりファンダメンタルズが変化し、不確実性が増したと判断したからです。

取引の詳細

クックビズ(6558)の週足チャート 出所:株探

 銘柄 株数 購入単価 売却単価 損益 損益率 購入日 売却日 年換算
クックビズ 200 1,490 783.5 141,300 -47% 2018.11.26

2018.12.26

2020.4.6 -37%

見事に大底で売却していますね。
私が短期の株価を読むのが如何に下手か、良くわかります。

当時の事業の状況

当時の最新の決算は1月14日に発表された2019年11月期通期決算で、少し業績に陰りが出ている状況でした。
まずは2019年11月期通期決算を振り返りましょう。

2019年11月期第1~4四半期累計

売上 経常利益
2019年1~4Q(百万円) 2,973 227
2018年1~4Q(百万円) 2,503 137
前年比 +19% +70%

2019年11月期第4四半期のみ

売上 経常利益
2019年4Q(百万円) 768 65
2018年4Q(百万円) 712 88
前年比 +8% -26%

業績予想に対する進捗率

売上 経常利益
2019年1~4Q(百万円) 2,973 227
業績予想(百万円) 3,064 205
進捗率 97% 111%

利益面において通期業績予想を上回ったものの、4Qのみの数字はすこぶる悪いです。
わずか+8%の増収、減益となっています。
4Qはクックビズにとって稼ぎ時であるだけに、ここで稼げなかったのは痛いですね。
何が起こったのでしょう?
事業別に見ていきましょう。

事業別実績

人材紹介事業

売上 営業利益
2019年1~4Q 1,809 377
2018年1~4Q 1,629 220
前年比 +11% +71%
2019年予想 2,007 434
進捗率 90% 87%

求人広告事業

売上 営業利益
2019年1~4Q 1,130 105
2018年1~4Q 854 150
前年比 +32% -30%
2019年予想 1,027 32
進捗率 110% 327%

人材紹介事業は通年で+11%の増収となっています。
しかし、4Qだけを見ると-3%、まさかの前年割れです。

一方、求人広告事業は通年で+32%の増収、4Qだけでも+28%増収と高水準を維持しています。

人材紹介事業が問題ですね。
1月20日発表の質疑応答によれば、社長は「面談から応募の承諾、そこからの決定率はむしろ改善しているが、面談数の確保が難しくなってきている」と述べています。
有報にもWebマーケティングの強化施策が計画通りの成果を上げることができなかったと述べられています。

成長限界を疑わせる内容ですが、私はこの時点では(新型コロナが流行するまでは)成長限界だとは思いませんでした。
広告効率の悪化という問題は2018年11月期から言われていたことです。
当時のIRの説明では、拠点外からの応募者が多く、決定率が悪いということでした。
これは裏を返せば、拠点数を増やしていけば、解決するんじゃないの?とい思います。
2019年11月末時点での拠点は本社大阪、新橋、五反田、名古屋、福岡の5か所のみです。
まだまだ成長余地はあるかな、という印象です。

その後12月に札幌、1月に京都にオフィスを開設しており、手は打っているように見えます。
また、求人広告事業は相変わらずの堅調で、人材紹介事業の成長率は下がってきてはいるものの、こちらがカバーしてくれそうな勢いです。
拠点拡大によって、今後の推移がどのようになるか、もう少し見守ろうかな、と決算発表当時は思いました。

新型コロナウイルスの流行と売却判断

決算直後の投資判断としては、人材紹介事業の成長鈍化により収益予想の若干の下方修正は必要なものの、利回りは10~15%くらいに収まりそうでフェアバリュー、急いで売るほどではない、というものでした。
ところが、新型コロナウイルスの流行により、あれよあれよと株価は下がってしまいました。

新型コロナウイルスの影響で消費者が外出を自粛し、外食産業は大きな打撃を受けていました。
特に大人数での飲み会が需要のメインである居酒屋への打撃が深刻でした。
外食産業が不調となれば、当然、人の採用も大きく減るでしょう。
それでも、2月末くらいまでは、私はそうした自粛活動は一過性のものに過ぎず、長期的な見通しに影響を与えるものではないと考えていました。
ところが、実際に流行が始まってみると、ウイルスの影響は数年に及びそうだ、ということがわかってきました。
ワクチンが開発され、実際に人々に接種されるまで、早くても1年くらいかかるようです。

となると、長期の見通しとは言っても修正が必要になってきます。
クックビズが成長するためには、クックビズ自体も人を増やしていかなければなりません。
コンサルタントや広告の営業員などですね。
ところが、今期、来期と需要が大きく減る見込みであれば、クックビズも自社の採用を抑える必要があるでしょう。
場合によっては人員を減らすかもしれません。
仮にワクチンの接種により流行が収まって、社会が元通りになったとしても、元の成長曲線にすぐに戻る、というわけにはいきません。
人を育てるには一定の時間がかかりますからね。
つまり、何年か成長が後ろ倒しになる可能性があるのではないか、と考えました。

しかし、それが何年になるのか、見通すことは非常に困難です。
したがって、5年後の収益予想をもとに利回りを算出するといういつもの手法は、適さないでしょう。
ここは利回りではなく、実績PERを見るべきかと思います。
売却価格の783.5円だと、2019年11月期実績PERは12.3倍です。
つまり、何年後かに収益性がもとに戻った場合、PERは12.3倍になるということです。

この株価が割高なのか、割安なのか、判断は非常に難しいです。
しかし、もしキャッシュを持っていて、新たに購入を検討しているとしたら、4月6日時点でクックビズを783.5円で買うという判断はしないだろうと思います。
何年先になるかわからないウイルスの終息を待ってクックビズに投資するよりも、ウイルスの流行下でも業績を伸ばせるような企業に投資した方が確実でしょう。
当時はほとんどの企業が安値で叩き売られていた状況でした。
それならウイルスの終息という不確実性に欠けるよりも、もっとリスクの低い、かつ期待リターンの高い投資先に乗り換えた方が良いと考え、売却することにしました。

その後の事業の推移

その後、2020年11月期第1から第3四半期決算が発表されましたが、いずれも赤字で酷い内容でした。

(百万円) 2019/11 2020/11
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q
売上 622 838 745 768 552 390 253
前年比 +20% +28% +280% +8% -11% -53% -66%
経常利益 -20 153 28 66 -163 -120 -161

8月5日には希望退職者の募集を開始し、9月30日の発表では63名が応募したと発表されました。
2020年11月期第1四半期末時点の従業員数は218名なので、実に3割近くです。
さらには、7月には五反田オフィス、10月には札幌、横浜、京都、福岡オフィスが閉鎖されてしまいました。
札幌は昨年12月、京都は今年1月に開設したばかりなので、会社も断腸の思いだったでしょう。

クックビズは人材紹介・広告という「サービス」を提供する会社です。
したがって、事業価値の根拠となるのは「人材・webサイト・オフィス」です。
これらの重要な無形資産が棄損してしまったわけです。

そして、私は売却当時「何年か後には元どおりになるだろう」と考えていましたが、今ではそれすら怪しいと考えています。
通常、ワクチンは何年もかけて安全性を確認した上で実用化されるものです。
過去にはワクチンが副作用を起こし、社会問題となった事例がいくつも起きています。
急ピッチで開発されたワクチンを国が「全員に接種します!」と言ったところで私は自分と家族への接種を拒否するでしょう。
もともと若年層では重症化しにくいと言われる新型コロナウイルスですから、ワクチン接種により得られるメリットに対し、リスクがあまりに大きすぎます。
それなら、自粛生活を続けた方が良いです。
私と同じ考えをする人は結構いると思います。
つまり、ワクチンが供給されたとしても、社会は元どおりにならないと思います。

また、テレワークの普及は不可逆的なものだと思います。
「会社に行かなくても仕事が回る」と人々が気づいてしまった以上、コロナの流行が収まっても、あの不快で無駄な通勤を毎日して会社に戻りたいとは思わないでしょう。
当然、会社の飲み会や昼休みのランチなどの機会は減ります。

したがって、人々が外食をする機会は、コロナ前に比べて大きく減少したまま落ち着くのではないかと思います。
外食産業はコロナ前の水準より縮小する可能性が高いです。

つまり「何年後かに元通りになる」という前提は危険だということです。
クックビズがかつての収益性を取り戻すのはもう無理なのではないかと思います。

クックビズへの投資の総括

クックビズを最初に見つけたのは2018年3月頃で、当時は株価3500円程度で割高でしたが、先行投資により減益予想を出し、株価が下がってきました。
上場後先行投資により一時的に利益が減少するというのは良くあることです。
なぜなら新株発行は事業を拡大するために行うもので、事業拡大のために投資すれば費用が先行し、減益になるのはごく当たり前のことです。
しかし、市場はなぜかそれを理解できずに株価は大抵の場合、暴落します。
つまり、こうした上場直後の減益パターンは割安に買えることが多いということです。
クックビズもこのパターンにはまり、さらには12月末の相場下落時にも買い増しでき、良い値段で仕込めました。

クックビズ(6558)の週足チャート 出所:株探

平均購入単価は1490円。
当時の予想PERは44倍でしたが、2019年1月に発表された通期予想では利益がV字回復、PERは26倍に下がりました。
成長株としてはかなり安く仕込めたと思います。

その後、順調な決算を重ね、2019年12月には高値3650円を付けましたが、まだ先行投資前の利益率には戻っておらず、株価は割高ではないと判断し、保有を続けました。

その後、コロナが流行し、株価は暴落しました。

もっと早く売却判断できなかったのか

株価チャートを見れば、大底で手放しており、もっと早く売っておけば、あるいはもっと遅く売っていれば良かったのでは、と思います。

まず、もっと遅く売っていれば、とは全く思いません。
業績が悪化するのが明白なのに、反転に賭けて投資するというのは私にはないやり方です。
4月、5月の上昇は緩和マネーの流入と「もしかしたら業績は思ったより早く回復する?」という浅はかな期待によるもので、結局その後業績が厳しいことを皆が悟り、株価は低迷しています。
短期の株価の上下は私には予想が不可能だと自覚しています。
何度同じ状況に直面しても、この時点の判断は売り、でしょう。

ただ、もっと早く売っていれば、というのは思います。
もともと新型コロナウイルスに対しての考え方が、「いずれは元に戻るのだから長期的な視点では無視すべき要素」というもので、その考えを引っ張りすぎました。
また、短期的な業績悪化についても、ここまで悪化することを想定できていませんでした。
長期的な視点にこだわるあまり、企業の外部環境の変化と、それがファンダメンタルズに与える影響を軽視していたように思います。

私の癖として株価が大きく動くと、脊髄反射的に「いや過剰反応だろ」と考え、逆の行動を取るのですが、今回は市場の方が正しかったということです。
自分を過信しましたね。反省です。

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