競争優位性シリーズの続きです。
※参考記事
2017.12.2 競争優位性
2017.12.9 競争優位性の要因①:ネットワーク効果
次に無形資産について書きます。
現金、土地、建物、機械などの実体のある資産が「有形資産」と呼ばれるのに対し、実体のない資産は「無形資産」と呼ばれます。
具体的には特許、法的規制、ブランドなどが無形資産に該当します。
特許
特許を有するビジネスの代表的な例としては、製薬メーカーが挙げられます。
製薬メーカーは新薬を開発すると、特許によって一定期間(日本の場合は出願後20年)、独占的に販売することができます。
特許が切れてからは他社もジェネリック医薬品の開発が可能になりますが、ジェネリックの価格は新薬の半分~8割安程度です。
逆に言えば特許の力によって倍~5倍の値段で売ることができているということです。
このような破壊的な価格差をもたらす競争優位性は中々ありません。
特許によって守られているビジネスを発見した場合、競争優位性が高いと判断して良いでしょう。
ただし、特許の有効期間には注意が必要です。
法的規制
法的な規制がなされている業界では、規制そのものが参入障壁となるため、しばしば独占・寡占市場が生じます。
例えば、地上波テレビ局は放送法による許可が必要なので、新規参入が難しくなっています。
法的許可が必要になる事業の例としては他にもこんなものがあります。
- タバコ:日本でタバコを製造できるのはJTだけ。
- 電力・ガス・水道
- 携帯電話:ドコモ、AU、ソフトバンク
- カジノ、競馬場、競艇場
注意点としては、規制緩和のリスクがあることです。
上記の例でも、電力自由化によって消費者が電力会社を選択できるようになったり、携帯電話市場はMVNOへ開放され、自由競争により価格が下がり始めました。
個人レベルの話ですが、弁護士業界では2004年の法科大学院の創設以降、弁護士の数が増えすぎたために年収が半減したそうです。
ブランド
ブランド力のある商品は、他の商品よりも高い値段で売ることができたり、消費者に優先的に選んでもらえたりします。
その理由は消費者に「この商品(会社)は他の商品より優れている」とインプットすることに成功しているからです。
そのためには、消費者に「この商品は優れている」という情報に繰り返し触れさせる必要があります。
情報源は、消費者自身の使用経験や、周りの人から聞く評判などもありますが、最も重要なのは広告です。
企業は広告宣伝費を惜しみなく使い続けることで、ブランド価値を維持することができています(忘れられたら負け、ということです)。
ブランドが重視される商品としては以下のようなものがあります。
- 衣料・装飾品:単なる革の鞄になぜ数十万円も出せるのか、男にとっては謎ですがそれがブランドの威力です。
- 飲料:コカ・コーラはバフェットが投資したことで有名です。
- 外食:マクドナルドもバフェット銘柄として有名ですね。
- 食品:菓子メーカーなどは広告を継続的に打つことでブランド価値を維持しています。「何だかわからんメーカーのチョコ」と「明治のチョコ」があったら多少高くても後者を選択しますよね。
- 高級車:ベンツ、BMW、ポルシェなどは長い歴史に裏打ちされたブランドがあります。
- ディズニー関連商品:これもバフェット銘柄。
「消費者向けの商品である」「実用性よりも消費者の感覚によって判断される」という共通点が見えます。
注意すべきは、ブランドは「白黒つけられない」という点です。
消費者向けの企業は多かれ少なかれ皆ブランド力を持っています。
自動車メーカーにしたって、トヨタ、日産、ホンダ、皆ある程度のブランド力があります。
この会社はブランド力がある、この会社はない、と線引きすることは不可能で、「何となくホンダよりトヨタの方がブランド力が強いかな」という感じです。
結局、ブランド力はグレーがどれだけ濃いか、つまりは程度の問題だということです。
上に挙げた特許や法的規制など、白黒つけられる(あるかないかがはっきり判別できる)優位性と比べると、ブランドを競争優位性の根拠とする投資は難易度としては高いです。
また、継続性と知名度が重要という特徴から、ブランドを売りにする企業は歴史の長い企業や大企業が多く、本ブログの主な投資対象である小型成長企業ではあまり見られません。
その他の無形資産
その他の無形資産としては、(すぐには模倣できない)特殊な技術・ノウハウ、(入手するのが困難な)顧客情報データベース、(開拓するのに時間がかかるような)取引先とのコネクションなどが挙げられます。
いずれもブランドと同じく「白黒つけられない」優位性なので、これらを競争優位性の根拠として投資する場合には「本当に他社には簡単に模倣できない優位性なのか」という視点で慎重に判断する必要があります。
無形資産は幅の広い概念であり(例えば前回記事のネットワーク効果だって無形資産の一種と言える)、どんな企業でも何かしらの無形資産は持っていると言えるため、過信は禁物です。