競争優位性シリーズの続きです。
※参考記事:2017.12.2 競争優位性
今回は競争優位性の中でも最も強固なものと言われる「ネットワーク効果」について書きます。
ネットワーク効果とは
ネットワーク効果とは、ネットワークを持つ仕組みにおいて、利用者が増えれば増えるほど利便性が増していく性質のことを表します。
LINEが典型的な例です。
メッセージアプリは数多くありますが、選ぶとしたら日本ではほぼLINE一択です。なぜかと言えば皆が使っているからです。
メッセージアプリは自分だけで使うわけではなく、相手も同じアプリをダウンロードしていなければならないため、必然的に選択は「一番利用者が多いアプリ」になります。
こうしてスマホを手にした人が一番利用者が多いという理由で次々にLINEを選択していくため、ますます利便性が高まり、さらに利用者が増えていくという繰り返しでLINEは1人勝ちになるまで普及しました。
このように、利用者が新たな利用者を呼び込むことで加速度的に普及するのがネットワーク効果の特徴です。
直接的効果と間接的効果
ネットワーク効果には「直接的効果」と「間接的効果」の2種類があります。
直接的効果とはLINEのように、ネットワークへの参加者が1種類しかいない場合を指します。
間接的効果とは「売り手」と「買い手」の2種類の参加者によってネットワークが形成される場合を指します。
例えば、クレジットカード(VISA、MASTERCARD、AMEX、JCBなど)の場合、加盟店(売り手)はなるべく利用者が多いクレジットカード会社に加盟する一方、利用者(買い手)もなるべく使える店の多いクレジットカード会社を選択するので、ネットワーク効果が働きます。
売り手側と買い手側の相互作用によりネットワーク効果が働くのが間接的効果の特徴です。
直接的効果の例
- SNS:Facebook、Twitter
- 口コミサイト:食べログ、クックパッド
- PCソフト:Word、Excel
- CtoCのECサイト:ヤフオク、メルカリ
- 言語
対照的に、BtoCは企業(BはBusinessの頭文字)が消費者に売ること。
間接的効果の例
- ゲーム機:PlayStation、Wii
- PCやスマホのOS:Windows、macOS、Android、iOS
- 旅行予約サイト:楽天トラベル、じゃらん、るるぶ
- 不動産情報サイト:SUUMO、HOME’S、at-home
- 価格比較サイト:価格.com、トリバゴ
- BtoCのECサイト:Amazonマーケットプレイス、楽天市場、モノタロウ、ZOZOTOWN
最強の競争優位性
ネットワーク効果は競争優位性の中でも最も強固なものです。
その理由は、参入障壁の高さです。
ネットワーク効果は、利用者が新たな利用者を呼び込み、加速度的に利便性が増していく性質を持つため、一旦差が付くと後発が先頭(または先頭集団)に追い付くのが非常に困難です。
結果、参入障壁が恐ろしく高くなり、ほとんどの場合、独占・寡占になります。
直接的効果の場合、複数のネットワークへ参加するメリットが薄いので、独占になりやすいです。
例えばメッセージアプリの場合、LINE1個だけスマホにダウンロードしておけば十分です。
ヨーロッパではWatsAppというメッセージアプリが先に普及していたため、後発だったLINEは太刀打ちできませんでした。
間接的効果の場合、売り手側にとっては、複数のネットワークに参加するメリットが大きく、後はコストが左右します。
例えば不動産情報サイトの場合、仲介業者はなるべく多くの顧客に見てもらうために複数の主要サイトに掲載します。仲介業者がサイトに支払う掲載料は成果報酬型が多いので、コストは回収できます。よって、不動産情報サイトは複数のサイトが共存する寡占状態となっています。
一方、ゲーム機の場合、PS2がセガサターンを駆逐した例は有名ですが、ゲームソフトメーカーにとっては1つのゲームを複数の機種に対応させるコストが高すぎ、また子供たちにとっても親に2種類のゲーム機を買ってもらうのは至難の業だったため、普及面で一歩リードしていたPS2がセガサターンを引き離し、最終的には市場を独占することとなりました。